詩集1

 地元の新聞等に投稿した真面目系の詩集です。(その1) 1999・4〜1999・10

タイトル 発表年 発表先 備考
ヒメノボタン 1999年10月 高知新聞・高新文芸  
アマガエル 1999年10月 高知新聞・高新文芸  
さよなら1999夏 1999年9月 高知新聞・高新文芸  
リュウゼツラン 1999年9月 高知新聞・高新文芸  
高知県東部豪雨後 1999年9月 高知新聞・高新文芸  
止まない雨 1999年8月 高知新聞・高新文芸  
夜行バス 1999年8月 高知新聞・高新文芸  
最後のメダカ 1999年8月 高知新聞・高新文芸  
へメロカリス 1999年7月 高知新聞・高新文芸  
台湾発見 1999年7月 高知新聞・高新文芸  
1999年6月 高知新聞・高新文芸  
ありのハネムーン 1999年6月 高知新聞・高新文芸  
銀の森 1999年6月 高知新聞・高新文芸  
桜とハイビスカス 1999年6月 高知新聞・高新文芸  
今年のたけのこ 1999年5月 高知新聞・高新文芸  
たんぽぽ 1999年5月 高知新聞・高新文芸  
トマホーク 1999年5月 高知新聞・高新文芸   
桜の女神 1999年5月 高知新聞・高新文芸  
春の宅配便 1999年4月 高知新聞・高新文芸  
トチカガミ 1999年4月 高知新聞・高新文芸  



ヒメノボタン (1999年10月発表作)

人は何故欲しがったりするのだろう
珍しいとか変わっているとかいうと
人は何故乱獲するのだろう
下手をすると絶滅してしまう植物なのに

本来野生植物とは
そこで咲いてこそ野生植物なのに
野生植物とは
人が思っているほど
育てやすい訳ではないのに

いつから人は自分だけ独り占めしようなんて
さもしい心を持つ様になったのだろう
希少になったからこそ
未来の財産として
みんなが大切に育てようと思う
広い心を持てないのだろうか
これも文明がもたらした
負の遺産というものだろうか
それも悲しいね

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アマガエル (1999年10月発表作)

大気の湿度が上がるに伴い
アマガエルが鳴き始める
僕の住む家の付近でも

けど、一つ不思議に感じる事がある
自宅の周りは海の付近で
川はない
湿地はない
池はない
田んぼすらない
それなのにどうして
カエルがいるのだろうか?

井戸の中で生活しているのだろうか
それとも進化して
海中オタマジャクシなんているのかも
それともカエルだけが使っている
秘密の四次元トンネルなんてあるのかも・・・
そんな僕の存在など無視するかのように
元気にアマガエルは鳴いていた

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さよなら1999夏 (1999年9月発表作)

よさこいも過ぎ
甲子園も終わり
最後の砦だった
八月も過ぎてしまった

あれほどうるさいと感じていた
朝もくまぜみも
声が聞こえなくなると
なんとなくさびしいな・・・と思う

聞こえてくる音も
日に日に少なくなる
あびらぜみと
今が盛りと鳴く
つくつくほうし
そして夜の虫達のハーモニー

今年の夏こそはと思った決意も
何もせぬまま過ぎてしまった時間
そしてさよなら・・・1999夏

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リュウゼツラン (1999年9月発表作)

リュウゼツランが咲きました
千松公園の片隅で
リュウゼツランが咲きました
数十年に一度しか咲かない花です

虫達が集まってきました
コガネムシ、蝶、蜂・・・
虫達も数十年に一度しか味わえない
禁断の蜜の味を楽しんでいるようです

そして台風が近付き
雨や風が続いた後
リュウゼツランを見に行くと
花は傾き咲き終わっていました
リュウゼツランは風や雨に痛めつけられ
花の命を終えました
そして数十年生きた
リュウゼツランの命も終えました
リュウゼツランは花を咲かせた後
命を終え枯れてしまう植物です

傾いたリュウゼツランの背後には
久しぶりの青空が広がっていました
もうこのリュウゼツランが
見ることはない青空です

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高知県東部豪雨後 (1999年9月発表作)

たった一日でこんなに変わるもんだ
昨日まで何も変わらなかった
北川村の林道が
一夜明けると
違う形になっていた

昨日まで測量で測ったポイントは
土砂で埋まり
林道付近を流れていた谷川は
土砂がえぐられ
川幅が1.5倍位に広がっていた
そしてあちらこちらに
小規模な土石流の跡がある

自然の力って恐ろしいものだと痛感した
たった一日で
昨日までの日常が
今日の非日常になっている
そしてこんな時
人間って無力なんだなって実感した

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止まない雨 (1999年8月発表作)

月曜日雨
火曜日雨
水曜日雨
一週間過ぎても
・・・やっぱり雨

晴れ間が見えたかな〜って思っても
やっぱり急に雨雲がやってくる

いいかげんに止んでくれないかな
体の中にカビが生えそうだ
体を突き破ってキノコが生えてきそうだ

早朝普段鳴かない時間帯に
あぶらぜみが鳴いている・・・
虫達も少しの晴れ間を見つけては
したたかに生きているようだ

僕もこんな天気ならそれに対応して
したたかに楽しく生きなきゃね

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夜行バス (1999年8月発表作)

PM20時新宿発
高知行きの
ブルーメッツ号に
僕は乗り込む

山梨を過ぎ
夜景の銀河を見ながら
僕は静かに
目を閉じた

バスの揺れる鼓動は
母の胎動に似ている
バスを推進させる
強いエンジン音は
父の鼓動に似ている

僕を乗せた鉄の方舟は
夢の中へ連れていったまま
高知へと進んでゆく
等速のスピードで
高速の道に従って

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最後のメダカ (1999年8月発表作)

高速の工事現場
既に買収され
休耕田となった湿地帯で
メダカが元気に泳いでいた

しかし日に日に湿地の面積は減り
もう逃げる事の出来ない場所でも
運命を知らないメダカは元気に泳いでいる

僕は嫌がるメダカを数匹すくって
近くの用水路に逃がしてはみたけど
焼け石に水かもしれない

確かに目に見えるところでは
メダカトラストとか
自然を大切にする風潮は生まれたが
その反面見えない所ではこうして
当たり前のように自然の生き物を
生き埋めにしている・・・
そんな現実も同居している
止められないまま
今日も明日も・・・

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へメロカリス (1999年7月発表作)

へメロカリスは    一日花
朝開いたら      夜しぼむ
一日だけの      その命

晴れたらいいね   そんな事
花に向かって     ささやいた
雨なら虫も      来ないまま
命を終えて      しまうものね

今日もどんより    した雲が
大粒の雨       落としてる
それでもそれでも  この花は
空に向かって     咲いている
晴れない空と     知ってても
晴れると信じて    咲いている

明日に開く      新しい
つぼみはきっと    青空の
下で咲いたら     いいのにね
明日は晴れたら   いいのにね

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台湾発見 (1999年7月発表作)

汽車=自動車
大飯店(酒店)=ホテル
酒家=レストラン
便利商店=コンビニ
公司=会社
同じ漢字の国でも違うもんだなあと思った

中国は一つという意識を
台湾の人々も持っているが
パスポートの印が示すように
あくまでも中華民国で
一つという考え方だった

台湾の人々は
中国本土のよりも
日本に親近感を持っているらしく
「こんにちは」
「ありがとう」
という片言の日本語を
機会があれば話そうとする人が多かった

台湾のタクシーは
全て黄色に統一されている
他の都市でも同じらしい

歩道にはやたらとスクーターが
止められている事に気付く
中国本土といえば
自転車というイメージが
強くあるのだが
こちらでは少し発展して
スクーターというところだろうか?

夜になると屋台などが
街の要所要所に出現するのだが
不思議な形をした果実とか
ナナフシ,タガメのような
見ただけで拒否反応が起きそうな
食べ物が並んでいる

奥には生きた鳥までいる
果たしてこの鳥の運命は?
・・・と思うと妙に気になったりする

中国人って合理性と雑然性とが
同居した民族なのだろうか?
・・・と僕の目には映った

行ってみれば分からない事って
あるもんだなあと感じた
台湾の旅だった

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 (1999年7月発表作)

今年も異常気象だろうか?
確かに梅雨入りは平年並みだった
しかし雨は降らない
梅雨入り以降まとまった雨が降らない

去年もそうだった
降らなかった雨が
四次元の空間から現れるように
突然の記録的な大雨となった

去年の傷跡はまだ完全には癒えていない
また去年の様な雨が降ったら
この傷跡はどうなるのだろうか
そんな不安なイメージが僕の頭の中をよぎる

もはや異常気象が正常となりつつある今
その原因となるもの
フロン・二酸化炭素・ダイオキシン・・・
何気ない日常の僕達の行動が
地球を傷付けているのかもしれない

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ありのハネムーン (1999年6月発表作)

午後になって
風が上昇気流に
変わる頃
羽あり達が
庭の巣穴から
様子をうかがい始める

そして兵隊ありに
見守られ
一匹そしてまた一匹と
羽あり達の
ハネムーンが始まる

羽あり達は
ビスカリアの花を越え
ガイラルディアの花を越え
ガウラの花を越え
果てしなく果てしなく
上昇して
そして空へと消えてゆく

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銀の森
 (1999年6月発表作)

山桜が終わる頃
森の木々は新芽を出し始める
木々は思い思いの緑で
初夏の山に緑のパッチワークをする。

そして山は深呼吸をして
夏鳥たちを山へと呼び込む

山が新緑に満たされる頃
椎の木達が
いっせいに花を咲かせる
椎の木の花は
森を白く覆い
太陽の光を浴びて
山々を銀の森へと変える

そして銀の森が次第に深い緑へと変わる頃
木々が夏の緑に統一されて
山は再び落ち着きを取り戻してゆく・・・

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桜とハイビスカス (1999年6月発表作)

五月二十日朝のニュースで
桜前線が北海道の果てまで
たどりついたとの便りを聞く

毎年桜前線は
太平洋から華やかに近付き
毎日のニュースは桜から始まり
日本を縦断してゆく
そして人々が桜の話をしなくなる頃
ひっそりと桜前線は
北海道の果てへと辿り付く
そして桜前線はオホーツク海へと帰ってゆく

そういえば今年の桜は山梨から始まったっけ

今日の我が家から見る空は快晴だ
景色も初夏というより夏色という感じだ
そう思うとたかが日本されど日本
広いんだなぁ・・・と感じる
そして庭に出てみると
鉢植えのハイビスカスが
今年最初の花を咲かせていた

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今年のたけのこ (1999年5月発表作)

四月の終わり頃
「今年はたけのこを食べられなかった・・・」
母がそうつぶやいた
そういえば毎年いらない位のたけのこを
知人からもらうのに
今年は一本ももらう機会がなかった
けどもうたけのこの時期は過ぎてしまった
母の残念そうな横顔だけが記憶に残った

そして一週間が過ぎ測量作業中に
「これからは、はちくの時期だよ。」
という事を山育ちの同僚から聞いた
そういえば僕は今まで
はちくというものを食べた事がなかった
はちくの食べ頃はもうそう竹と違って
膝より少し高くなった頃が食べ頃らしい
そしてこの場所は
許可を得ている場所なので
取っても文句は言われない
今年は違うたけのこを母に食べてもらおう!
そう思って昼休み僕ははちくを採取した。

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たんぽぽ (1999年5月発表作)

国道のたんぽぽ
トラックが通る度
首を何度か振って
空へとわたぼうしを放つ

きみたちはどこへ旅するの?
気まぐれな風にまかせるの?
それとも
きみたちの意志で風を振るの?

きみたちは一生に一度のギャンブルを
風にまかせる
一度根付くと
踏まれても
焼かれても
逃げる事は出来ない

わたぼうしたち
今度の大地は
夢のお花畑でありますように・・・

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トマホーク (1999年5月発表作)

新聞の記事にトマホーク1発140万ドルと書いてあった
そして最近の戦争で需要が伸びているとも書いてあった

けどトマホーク1発でどれだけの悲しみを生む事だろう?
その1発のためにどれだけの難民が出る事だろう?
その1発分のお金でどれだけの人が救える事だろう?

いつも平和の裏側には弱者の声がない
聞こえるのは権力者の言い訳だけ
必要な事って力で争う事だろうか
必要な事って破壊する事だろうか

こんな事を書く僕は平和の非国民だろうか
けどもっと心に余裕がある世の中になってほしいなと
僕は心から願う

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桜の女神 (1999年5月発表作)

満開の桜は嫌いだ
何故ならもう散るしかないからだ
そして春の妖精が去っていく様な気がして
不意に物悲しくなるからだ

僕は基本的に寒い日は嫌いだ
けど桜の咲く時期だけは
寒い日が続かないかなあなんて
思ったりする
何故なら桜が長持ちするからだ

けど天気は気まぐれだから
桜の妖精達をすぐに北国へと
追い払ってしまう

そういえば今年の春の甲子園も
いつの間にか終わってしまった
沖縄県勢春夏を通じて
初めての優勝というニュースを残して
今年の春の女神は
深刻な不況や基地問題に揺れる
沖縄にほほえみかけたようだ

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春の宅配便 (1999年4月発表作)

トントントントン
窓をたたくあなたは誰ですか?
トントントントン
ぼくは春風です

トントントントン
どうして窓をたたくのですか?
トントントントン
ぼくを家の中に入れてほしいのです

トントントントン
どうして家の中に入りたいのですか?
トントントントン
ぼくはあなたの家に春を届けに来ました

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トチカガミ (1999年4月発表作)

子供の頃ぼくたちは石土池の事を秘密の池と呼んでいた
ガタガタ道を必死に自転車のペダルをこぎ
辿り着くその場所は
威厳さを保ち
ヒシとトチカガミの楽園に覆われた
ヘラブナの楽園だった
まさに秘密の池に相応しい雰囲気を持った場所だった

そしてぼくたちが成長するとともに
石土池は秘密の池ではなくなった
大きな住宅地や大きな道路が
だんだん池を取り囲み
秘密の威厳さを奪い
明るく開けただけの池に変えていった

そしてある日新聞で
高知県の植物レッドリストを見た時
ぼくの心に小さな衝撃が走った
トチカガミは高知県での絶滅植物になっていたからだ

今石土池は蓮とブラックバスの名所になっている
しかしもうトチカガミやヘラブナの話は聞かない
そう思うと
もう記憶でしか残っていないあの頃の
威厳に満ちた風景が
急になつかしく思えた

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