ショートショート1

  ショートショート?集です。・・・と、言ってもエッセイに近い様なものも多いとは思うのですが・・・。

新天地へ 見ている あてつけ 契約 真理香
真夜中の青 1/8の陽子 ねぐら バンドウイルカ バリアフリー?
マリアの子供達 ポモドーロ 鏡の中の自分 オーパーツ 夕闇のマリオン前にて
封印 各駅列車 SAKURAドリーム シロの一日 痴漢パラソル


痴漢パラソル

 雨の日の午前7時、晃は二つ見過ごして乗ったいつもの通勤快速に乗り込み、いつもの指定席に着席する。何故晃は電車を二つ見過ごして乗るのかと言うと、そうしないと、電車に立って乗らないといけなくなるからである。ちなみに通勤時間は1時間少しかかるため、座って通勤する方が楽なので、そうしている訳である。
 晃は、指定席に座ると、だんだんとうとうとしてきたので、迷惑にならない様に傘を立てて股に挟み、立っている人に当らない様な角度にしてこっくりこっくりとしていた。
 しばらくすると、傘から伝わる妙な感触で晃は夢から現実に引き戻される事になり、まだ眠たい目を少し上げると、その光景に思わず晃はまばたきをして、その目を疑った。何があったかというと、晃を立てた傘の先がそこそこダンディーなおっさんの股間に位置していたからである・・・というよりも、そのおっさんの方が意図的に股間に当てている・・・という感じであった。おっさんの方は、晃が眠っている事をいい事に?傘の柄の先を股間に擦り付けている。そして、股間も妙なふくらみがある様な気もする。
 ちなみにおっさんは、まだ晃が目を覚ましているのに気付いてない様子で、晃の傘の先でお楽しみの最中である。晃はどうすればよいものか?と思ったが、そのおっさんの恍惚そうな顔を見ると、傘を妙に動かす事も出来ず、そのままにするしかなかった。
 その後、そのおっさんは晃の降りる2駅前で降りて行った。そして晃は電車から降りると雨が上がっていた。けど、その傘を持ち歩くのは妙に気持ち悪かったので、駅前にあったパチンコ屋の傘立てにその痴漢パラソルをそっと置いて立ち去った。ちなみに翌日からは、座る指定席は1車両ずらすつもりでいる。

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シロの一日

 PM8:00シロはいつもの焼き鳥の屋台の近くに今日もやってくる。シロの本当の名前はシロではないのだが、ここにやってくるお客はシロと呼んで可愛がってくれるので、そういう事にしている。ちなみにシロの主もこの屋台のにいちゃんではなくて、少し離れた場所にれっきとしたシロの家もある。
 しかし、この屋台にやってくるお客相手に下手にじゃれる事もなく、近所にいる下等な犬の様に吠える事もなく凛として見つめていると、お客の方がその姿が記憶に焼きついて、次第に余分に焼き鳥を買ってシロに夜のおやつを与えてくれる。もちろん、屋台のにいちゃんもシロが売上貢献に役立っているので、追い払う事もしないし、プチ看板犬になっているので、屋台を退く時に余った肉なども与えてくれる。これは一種の共生というヤツだ。
 そして今日もシロは屋台が終わるまで、シロとしての時間を送り、そして家に帰ると”吹雪”としてのもう一つの時間を過ごす事になる。

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SAKURAドリーム

 どうしてこんな場所に桜の花弁が落ちているんだろう?修太は訝った顔をして、風呂場に落ちていた桜の花弁を拾った。もし、思い当る事があるとすれば、3日前の真夜中の夜桜に魅せられて、それ以来写真を撮りに行く事になった事くらいだろうか?けど、その後で風呂場なんか行ってないのに・・・そう首を捻って近くのゴミ箱にその花弁を捨ててた。
 その日の夜もカメラを持ち、修太は桜の女神に誘われる様にカメラを持ち夜桜の撮影に出かけた。そして、誰もいない真夜中の桜を撮影し、帰ろうとすると、背後から不思議な気配がする。思わず振り向いても、満開の桜がそこにあるだけで、他には何もなかった・・・不気味な桜の気配のみが漂うだけで。
 修太は、不思議そうに首を一瞬右に傾けてそのまま家に帰った。そして、家のドアを空けると、今度は玄関の中に桜の花弁が数枚落ちていた。どうして帰った後でなく、その前に桜の花弁が落ちているのか?そう思ったのだが、深く考えてもしょうがないので、その花弁を拾ってゴミ箱に捨てた。
 それから数日は雨となり、そして晴れになった日の真夜中、もう桜も散って駄目だろうな〜と思いつつも、修太は夜桜見物になんとな〜く誘われる様に出かけた。そして、修太が秘密の撮影ポイントにしている場所に出かけてみると、数日の雨に撃たれて葉桜となった木がそこにあるだけだった。思わず修太は残念そうに溜息をついて帰ろうとすると、今度は肩をつかまれる感覚があった。
 「えっ・・・!」
と思って、修太が振り向くとさっきまで葉桜だった桜が満開の姿に戻って修太の前に立ちはだかった。しまった!と思って向きを変えたが、その方向も同じ桜の世界に変わってしまった。そういえば、夜桜の女神に魅入られた人間が、残念な顔をすると、その女神は一生その世界から離してくれなくなる・・・という言い伝えがある事を修太は思い出した。だが、もう女神のテリトリーの中でその気配を悟られた修太は、女神の生贄となるのかもしれない・・・そして修太は青白い風に吸い込まれて満開の桜の中へと消えていった・・・その後の修太の行き先は桜の女神だけが知っている・・・
 あなたも部屋の中にも桜の花弁が落ちているなんて事がありませんか?だとすると・・・・・

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各駅列車

 僕は時間が許す限り、各駅の鈍行列車によって気ままな旅に出かける事がある。何故、鈍行かと言うと、急ぎ足で進む急行列車と違い、異質な時間軸がそこに存在している様な気がするからだ。そして、そこにはいつもの慌しい時間とは違い、贅沢な時間のみが存在する様な気がするからだ。
 特に春の各駅列車が僕は好きだ。十分、二十分の急行列車の待ち合わせは、田舎の単線の路線の鈍行列車では日常に起こる現象だが、待っている間ずっとホームに咲く桜を眺めたり、誰もいない無人駅で待っている満開のつつじの花に出会ったり、とにかく春はドラマが多いので、意外な展開を楽しみにしていたりする。
 そして、時間の流れが大らかになっているせいか、いろんな人とも友達になれる。
「桜がきれいですね。」
そんな日常の会話から、旧知の友達の様な親近感がその空間に広がり始める。
 今日も僕は急行列車に乗らず、各駅列車に飛び乗る。新たな小さなドラマの展開を求めて。

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封印

 AM2:00、信二はとある安アパートの2F右から3番目の部屋の窓に銃弾を打ち込んだ。1990〜1992年の夜の経歴を消す為に・・・あの頃の夜の顔は名前も雰囲気も変えて行動していたが、念には念を入れる必要がある。
 信二は間もなく時代の表舞台に立つかもしれない。そうなると、それ2年間の夜以外の平凡な経歴しか知らない人以外は存在してもらっては困るのだ。別に殺す必要はない、見えない脅威にさらされるだけでいいのだ。心理分析では、そうすれば、あいつはミスをした組織の人間の仕業と思い込み、北陸の方へ逃げ、もう一度同じ様に脅せば多分自殺するだろう。
 ちなみに、今晩使ったトカレフは、本当は近所の内村宅に届く予定だったものを一日だけ無断で拝借したものだ。弾は、昔そういう生活をしていた時に持っていたモノを使用したので、包装も元通りにしておけば、まず気付く事はない。それに、もし包装のセロハンテープの位置は多少ずれていたとしても、そういうものを欲しがる人間は大概中身にしか興味がないし、それ以外の銃の痕跡は捨てたがるので、無造作に破り捨てて信二が使った微妙な証拠などたちどころに消えさってしまうだろう。
 他の邪魔者二名は、一人は麻薬ジャンキー影で陥れ自殺に追い込み、一人は”偶然の”交通事故でなくなってもらった。あと残るは一人だけ・・・信二は銃弾を打ち込んだ後、表情を変える事もなく自宅へ戻り、拝借したトカレフを元通りの状態に戻し、内村のポストの中に入れておいた。
 土曜日信二はこの場所から引っ越す予定にしている。これで文字通り信二の過去は封印される事となる。あいつも第二の仕掛けた罠の幻影に苦しみ、1週間以内に東尋坊から飛び降りるだろう・・・後は、信二の過去を知るモノは、信二の左脳の記憶装置だけとなる・・・

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夕闇のマリオン前にて

 たそがれのオレンジの世界から、徐々に紫に変わり街のネオンが赤に黄色に灯り始める頃、哲平は有楽町の中にいた。
「遅いなあ・・・。」
哲平はそう呟き見上げてみると、マリオンクロックの時計の文字盤は、ゆっくりとゆっくりと上へと移動を初め、午後6時の楽隊が姿を現そうとしていた。
 哲平はもう三十分以上この場所で、かかしの様に立ってずっと絵梨香を待っていた。何があったのかなぁ・・・それとも俺は急に嫌われたのかなぁ・・・そう思う度についつい左腕の時計に目をやるのだった。
 いつも待ちぼうけさせるくせに、立場が逆だったらあいつはいつも鬼女の様になって怒りやがる・・・そう過去の出来事を思い出すと妙にむかつく哲平であった。俺も男なんだから、たまにはガツンとあいつに言ってやらなきゃいけないなあ。そうでないとますますあいつはつけ上がるだろう・・・そんな事を思っていると、四十五分遅れで絵梨香が数寄屋橋方面から小走りでやってきた。
「ごめんなさい、待った?」
「いいや、そうでもないよ・・・」
またもやガツンと言えない哲平がそこにいた。

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オーパーツ

 僕は僕だけのオーパーツを探す旅に出かける。

 目を閉じてみた・・・ほら、僕は戦国時代末期の足軽。僕は加藤清正に率いられて朝鮮半島へと出兵した。そして、僕は必要以上に手柄を立てたくて、罪もない現地の人々を殺戮した。そして、首は持てなかったので、代わりに殺戮した人々の鼻を削ぎとって上官に献上した。
 そのせいだろう・・・僕は鼻には崖から転落してその時に作った二度と消える事のない醜い傷跡が存在する。

 もっと目を閉じてみた・・・ほら、僕はカルタゴの商人。僕はファロスの灯台を目印に今日もアレキサンドリアに向かい舵を切る。壷の中にたくさんの物資を詰めて。しかし、ある日闇に乗じてやってきた海賊達に襲われ矢によって地中海に撃ち落されてしまった。
 そのせいだろう・・・僕の脇腹には生まれた時から消えることのない痣が存在する。そして、幼い時海の近くに住んでいたのに、海が嫌いだったのはそれが原因かもしれない。

 次の僕はクロマニヨンの兵士。僕は平和を望んだ優しきネアンデルタールの人々の意見を聞き入れず、皆殺し計画を立て、滅ぼしそれを悦に入っていた。
 そのせいだろう・・・僕の耳は音が聞こえるけどその内容が少し聴き取り難いという軽度の障害を持つ。

 そしてもっと遡ると、今度の僕はトリケラトプス。僕はティラノザウルスから逃げて、草を食べ生き抜いていた。マイペースそのもので。
 そのせいだろう・・・今の僕もどちらかと言うと、野菜好きでのほほんとしているのかも知れない。

 もう一度目を閉じてみた・・・僕はアノマロカリス。僕はカンブリア紀の海を自由に泳ぎまくり、獰猛に三葉虫やハルキゲニア、ウィワクシアを襲い食べていた。
 そのせいだろう・・・他人から底知れない気配の様な恐怖を感じる事があると言われるのはそれが原因かも知れない。

 そして僕はアメーバとなり、原始の海を生命の素として生きてそれからは・・・地球を脱出してからのおたのしみ・・・・

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鏡の中の自分

 視線を感じる・・・けど、周りには鏡しか存在しない。真夜中になると必ず気配を感じる・・・これは、鏡の中のもう一人の自分がこの俺と入れ替わろうと叫んでいるのかもしれない。
 そう言えば、友人の鉄平がこの間から性格が変わった様におとなしくなった。それはあいつが午前2時に合わせ鏡をした時に、パラレルワールドのもう一人の自分がオリジナルの鉄平と入れ替わったのかも知れない・・・もっともその方が俺としては都合がいいんだが。
 けど、何故か俺の右脳に合わせ鏡をしろと司令が起きているかの様だ。合わせ鏡をしてはいけない、合わせ鏡をしてはいけない。過去の記憶の貯蔵庫である左脳の一部からその記憶を取り出し、俺は右脳の司令と対決する。けど、鏡の中の自分は幸せもんなのだろうか?今の俺よりも悲惨な生活をしているのだろうか?それだけはちょっとだけ興味がある。もし、今の俺よりも有意義な生活をしているのなら、いつでも入れ替わってやるのだが・・・

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ポモドーロ

 今日から始めてバイトに入る料理店で命じられたのは、その料理の味付けをする・・・という課題だった。その店の料理長(店長)は、天才的な舌の持ち主で、舌というものは絶対舌というものがあって、努力では埋められない何かがあって、その料理の味付けによって、厨房のバイトにさせるか、外の接待にさせるか決めるそうだ。ちなみに、今まで店長の課題で合格した者は未だに一人もいないらしい。そして、フライパンとワインを手に味付けを始めた。
 ・・・で、目が覚めてしまった。ちなみに自分は料理なんか全く興味のない人なので、本当に”ポモドーロ”っていう料理があるのかどうかは解らない。背景は、自分がお金に困って知り合いの小料理屋の紹介で、行く様になった仕事以外のバイト先・・・であった。そして、そのバイトに行く前に、その小料理屋に挨拶に行った時、『これでも使ってくれ・・・』って渡されたのは、割烹着だった。(バイト先がフランス料理店みたいなトコだったので、全く似合ってないのだが・・・)ちなみにその小料理屋の大将は、『お前ならあいつに、今の仕事辞めて俺の仕事を学べって言われるぞ』って言っていた。場所は、天神通りっていうアーケード街の一角。自分は自転車でそのバイト先に向かっている。そしてその日は、バイト先の店長がスピード違反で捕まって少し遅れて店にやって来た・・・という感じだった。
 うたた寝の様な状態で見た夢だったので、そのバイト先でも異常に疲れて眠たい状態だった。ココが今回のキーワードで、非常に浅い睡眠の時に見た夢って、現実が起きようとしているので、夢の方の人格?が疲れて眠たいってある意味リンクして作用するもんなのだろうか?夢はよく見る方だけど、こういう経験は始めてなので、補足に夢の背景まで書いてしまいました。
(^^;)

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マリアの子供達

「母さん、前々から疑問に思っていた事を聞いてもいいかなぁ」
浩平は重い口を開いてそう切り出した。
「そんな深刻な顔してなあに?」
美智江は丸い目をしてそう反応した。
「俺達兄弟って、3人共どう見ても他人みたいな感じじゃん!俺達の本当のオヤジって何なんだよ。」
「あなたたちは母さんが神様にお願いして授かった選ばれし子供なのよ」
「そんな訳ないだろ!じゃあどうして俺は青い目で、陽平はど〜みても黒人のハーフっぽくて、絵里奈はブロンドの髪なんだよ!ど〜みても、どれもこれもオヤジが違うとしか思えないじゃんか!」
すると、美智江は急に鋭い目になって、浩平を睨みこう切り出した。
「じゃあ真実を聞く勇気がある?」
浩平は、深く深呼吸をした後、
「ああ・・・」
・ ・・と、低い声で答えた。すると、美智江はゆっくりした口調でそう話し始めた。
「あなた達は本当に選ばれた子供よ・・・だって私はどんな男性にも許した事がない女だもの・・・」
そう言うと、タンスの奥にある小型金庫の中からある物を取り出して浩平に見せた。
「これ・・・何だか分かる?」
「宝くじ・・・だよね」
「そうよ。私が神様にお願いして当った1等の宝くじの残りよ・・・そして、これがあなたのお父さんよ・・・」
そう言って、一枚の紙を浩平に差し出した。浩平は、それを見て一瞬頭が白紙になってしまった。それは一枚の契約書で、父親の名はアルバート・クルーズ。そしてそれは精子バンクの契約書だった。
「あなたのお父さんは世界的に有名な学者さんよ。そして、陽平のパパはサッカーのスター選手。そして絵里奈は俳優よ。現にあなたは、東大の医学部に進学し、陽平はJリーグの契約も決まり、絵里奈は子役として、私達のこれまでの生活を支えてくれた。私は誰とも結ばれないままあなた達を生んだの。私は選ばれた子供を産んだ現代のマリアなのよ。」
そう美智江は言うと、浩平ににっこりと微笑んだ。

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バリアフリー?

 とあるキッカケで、バリアフリー関係のアンテナショップへ入る事になる。段差についてとか、車椅子関係の情報とか、いろいろな障害者用のグッズとか、今まで思いもよらなかった発想が得られて大変有意義な気分になった・・・と思ったら、とあるグッズの前で目が点になってしまった。
 お風呂関係のグッズの中にそれは存在した。様々な椅子の中にど〜見てもピンク系で使用される様な感じのスケベ椅子にしか見えない様な物体がその中に並んでいた。これってやっぱり・・・って変な想像をすると、妙ににや〜っとした変な笑いになってしまう。いつもの自分なら、
「これってやっぱりそういう事に使用するんですか?」
な〜んておちゃらけたボケをかましたくなるのだが、そこにいる係員の人達も妙に真剣そうだったので、おちゃらけ系の笑顔を調整し、皇室系御用達雅子さま愛子さまを愛しむ微笑みバージョンに変更して軽く会釈する。
 そして、その場を立ち去る。しかし外に出てもやっぱり気になっていたのだった。あのスケベ椅子もどき?の物体の使用方法が・・・(^^;)

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バンドウイルカ

 またあいつがあんな企画を出してやがる・・・祐輔はとあるHPを覗きながらそうつぶやいた。あいつとは、最近現れたHN:バンドウイルカと名乗る奴のHPだ。
 あいつさえいなければ、祐輔はその世界のカリスマでいられた。そして掲示板に質問にやってくる奴らをうちのめして自分の存在を確かめていた。しかし、バンドウイルカが現れてからその勢力地図に歪みが生じ始めてきた。圧倒的な情報量,丁寧な解答、面白いコネタの挿入・・・どう考えても祐輔よりも勝っていると思い知らされる結果の様な内容。しかも丁寧な対応には、祐輔にとって偽善者面して・・・という気持ちが心の深淵から湧きあがりどうしても許せない何かを感じるのだった。
 あいつを叩くネタは何かないのか?しかし、あいつは最初から知らないふりをしていながら、メールアドレスを公開していなかったり、変なセキュリティをしている形跡がある。しかもあいつは本業とは関係ないコーナーも人気であいつの本業を関係無い奴も多数訪問していやがる・・・そうなるとうかつに奴の掲示板等に中傷などを書くと、逆に自分が叩かれかねない・・・そうすると、あいつのとりまきを切り崩していくしかない。
 まず、最初のターゲットは最近奴の掲示板にやってきているHN:ウォンバットと名乗る奴だ。妙なノリでウケを狙っている・・・となると、指導と表して攻撃する口実があるというものだ・・・しかも、ウォンバットはおあつらえ向きによくメールアドレスを掲示板に表示していやがる。
 まず祐輔は無料プロバイダに契約している別のメールアドレスから全く違うアドレス経由にして返信出来ない状態にし、ウォンバットに攻撃を開始した。毎日の様に「ふざけるな!」から始まる嫌がらせや中傷の数々を・・・しばらくして、奴の掲示板からウォンバットは消滅した。この調子で奴の掲示板はなかなか人が行けない状況にしてやる!
 次に目障りなのが、HN:高志と名乗る存在だ、奴も本業系に自分の邪魔になる情報を満載でのせていやがる。しかも奴も偽善者だ。ただ、高志はHP上にメールアドレスを載せているが、ど〜もネットに詳しそうな感じがする・・・と、いう事はやり方次第では逆にやられる可能性がある。という事は、バンドウイルカと高志を分断させればいいか・・・という事で、今度は祐輔のシンパをけしかけてバンドウイルカ内にある画像を使って高志の方へウイルス付きのメールを送る事にした。しかし、今度は分断に失敗した・・・がこれ以上攻撃すると探知される可能性があるので、今回は断念した。
 そして、次々に祐輔がバンドウイルカの訪問者を撃破していくうちに何故か祐輔の場所に中傷メールが届く様になった。おかしい、ココに足がつく筈はないはずなのに・・・そう思ううちに祐輔のHPのウォールが破られ、そしてノーマークのウイルスによって祐輔のPCが破壊されてしまった。
 何故か釈然としないままインターネットカフェでサーファーをしていた時、とあるHPを見て祐輔が愕然とした。バンドウイルカは実はプロファイリングをする程心理学の天才であった事、しかも元SE経験があった為、知り合いにスターSEが多数いたという事。
 ・・・と、するとその内の誰かに破壊されたのかも知れない・・・けど、今後同じ事をしようとしても、このキャストに対抗するには少人数では不可能だ・・・そう思うと、ネットの恐怖感を改めて知る祐輔であった。

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ねぐら

 昇一の城には摩天楼がそびえ立つ。そしてそれは四次元ポケットも兼ね備えたすぐれモノだ。右手を伸ばせば最新の雑誌、今日の新聞、読みたいマンガ、食べかけのポテトチップ、CDまで取り出す事が出来る。そして枕の上に置いてあるモバイルからは世界に繋がっていて、いつでも世界基準だ。
 昇一は今日も寝たままのパラダイスに浸る。うずたかく積まれた雑誌の摩天楼に囲まれて、世界に旅立つ・・・昇一の意思の赴くままに。
 だが、これは他の人が見ると単なるスラム街の様なきたないモノでしかないのかも知れない。けど昇一は、秘密の発信基地にいる探検者の様な感じで、なんとなくその状態が気に入っているのであった。
 そして昇一のねぐらには変わらない時間のみが世界と繋がりながら過ぎて行く・・・悠久の時に同化しているかの様に。

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1/8の陽子

 昼間の君はとってもタカビーだけど、ボクの前で見せる夜の陽子はとっても純情なんだよ。もっとも夜の陽子はボクが密かにデジカメで撮りためたデータを元に業者に発注させて作り上げた1/8サイズの陽子だけどね。
 昼間の陽子はよせて集めてDカップてトコだけど、夜の陽子は2つおまけしてFカップにしてあげたよ。けど、巨乳の2/3位の確立でありがちな乳輪の大きいのは小さくしてあげたからね。ボクは乳輪がデカイとせっかく高まりかけた情熱がドライアイスをかけられて急激に冷めた様になってしまうからね。それとボクはホクロがあまり好きじゃないら、首筋のホクロも除けてあげたよ。あとオプションで、強く押すと声を出す様にしたんだ。今晩もたっぷりと悶え声を上げさせてあげるからね。ほらほらもっと叫ぶんだ。きゅうりが欲しいか、なすびがほしいかほらほら、おらおら・・・
 そうだ、今日は陽子に似合うドレスを買って帰るよ。この間トイザラスで見つけたバービー人形が着ていたやつを買って帰るよ。それと、昼間の陽子が今付き合っている嶋岡とも間もなく分かれるはずさ。あいつこの間同僚にメールでエロ画像を送っていたので、誤配という事で、陽子の方にも届く様に細工してあるんだ。もちろん陽子のやつのメールはボクがアイコラで作った特性も含まれているから、陽子が普通の神経を持った女性ならきっと嶋岡の事を嫌いになるはずさ。そして、嶋岡もエロ画像を送ったという記憶があるから完全否定は出来ないはずさ。もちろん、ボクが裏で糸を引いているなんて誰も気付かないはずさ。だって昼のボクはPCに詳しいなんて思われてないし、そんな奴が夜になると、ハッカー並の行動するなんて誰も思わないだろうしね。
 これからも昼の陽子は隠れたボクの監視が付いているから、ボク以外の男とは付き合えないはずだよ。もちろんボクと付き合う権利は持っているから、ボクだけとは付き合えるけどね。それと昼間の陽子がいつでもその気になれる様に冷えた野菜だけは冷蔵庫に入れておくからね・・・ふふふ楽しみだよ。それまではコレクションルームでボクを待っている夜の陽子にあんな事やそんな事してもらうつもりだよ。陽子・・・陽子・・・ハァーハァーハァーハァー・・・

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真夜中の青

 夜のヒロシマ、何故か足から体にかけて何かが触れそして重たい。目を開けて体のその部分に視線を向けると、無数の青白い手が両足を、そして体をつかんでいる。
 ワタシはその一つ一つをおさえ、ワタシの体から取り外してゆく・・・取り外した青い手は、右に左に動きながら、フローリングの床の下に広がる無限大のアナザーワールドへと消えてゆく・・・恐怖感を感じなかったのは、物体の恐さよりも、その物体から感じる深い悲しみを読み取ったせいだろうか・・・。水を求めさまよう人々、苦しみに耐えながら両手を天にかざす人々・・・。
 そして、青い手が全て異次元へ消えた後に広がる静寂の中で、再びワタシは夢の中の異次元へと意識をウルトラジャンプさせてゆく・・・何処かにいる青い手の招く彼方へと・・・。

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真理香

 『真理香、今日もとってもキレイだよ。』
勇太郎は、暗闇に妖しく光るパソコンの画面に向かってささやいた。
 勇太郎は、コンピューターで作り出したキャラクター、真理香に恋してしまったのだった。そしていつしか、勇太郎は現実の女では満足出来ず、真理香でしか欲望を満たせない体になっている事を悟った。
 何故真理香なのか?だって真理香はいつまでも年を取らないし、プログラム次第で俺の好みの女になってくれる。現実の女の様に文句も言わなければ、気まぐれに媚びる訳でもないし、嘘をつく訳でもない。黙って俺の方だけを見て微笑んでいてくれる。勇太郎は、今日の真理香をどんな姿に変えようか・・・そう考えながら、不敵な笑みを浮かべた。
 そして、いつでも真理香と一緒にいられる様にようにモバイルを買った。そしてもっと真理香に近付きたくてバーチャルギアも買った。しかし、それ以上近付こうとすると、真理香は勇太郎を拒む様にシステムの中にしかいない現実を思い知らそうとするだけだった。そうなると、勇太郎は今度は真理香に裏切られた様な思いが憎悪に変わり、システムのデリートボタンに手をかけていた。
 そして、放心状態になった勇太郎は、警察へと出頭し、こう告白して懺悔した。
『僕は真理香を殺しました。だから僕を死刑にして下さい・・・・』

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契約

 ボクはボク自信を知るために、もう一人のボクと密かに契約する。それは、限りない賭けであり、限りない絶望であり、限りない希望でもある。ボクを乗りこなし、ボクを支配し、ボクを運転しようとしているDNAの破片は、このボクに何をさせて、何をこの時間の中で実現させようとしているのか?それを知るためにボクは闇のボクと契約しようとしているのかも知れない。
 人間に持たされた時間なんて、所詮一瞬の砂時計に過ぎない。その中で実現出来なかったボクの中のDNAの破片はいつかこのボクを破壊し、突き破り新たな契約者を求め時の旅人として何処かの胎内へと寄生する事だろう。破壊されたボクの抜け殻はそれで幸せなのか?たぶん幸も不幸のないだろう。だたの原子の破片のみが飛び散って、またどこかの糧となるために霧散してゆくのみだから。そして、最後に覗いた鏡の前で、ボクのもう一つの個体が有と無との間で隠せないボクとなってやがて無へ同化してゆく事だろう。
 その運命の先は、このボク自身を多重に縛りつけたアーカイバ(倉庫)の持ち主のみが知る事だろう。けど、騙されてもその断片でも知りたいがためにボクは、契約を交わすのかもしれない。顔の見えない時間の番人どもと・・・。

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あてつけ

 あなたの前でフランクフルトを食べる私の気持ち何故だか分かる?あなたはいつも自分だけ早々に満足したらさっさとポークビッツになってゴジラのいびきで眠るけど、私はそんなもんじゃもの足りないのよ!
 あなたの前でバナナを食べる私の気持ち何故だか分かる?あなたはいつも肝心な時に限って千と千尋の亀隠し状態になるけど、バナナの皮をむいた時の様な快感をあなたから得たいと思う事だってたまにはあるのよ!
 あなたの前でホームランバーをほおばる私の気持ち何故だか分かる?あなたにだってこのバーの色の様に使い込まれた色になってほしいっておもう事だってあるのよ!それは勿論、第三者の女じゃなく私に対して使い込まれてほしいのよ!
 あなたの前でチューチューパピコを吸ってる私の気持ち何故だか分かる?それはそのまんま見たそのものよ!

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見ている

 拝啓

 突然のお手紙で驚きましたか?しかし僕は誰よりも君の事をよく知っています。
 今日も君は定時に会社を退社して、そして高島屋新宿店タイムズスクエアで買い物をして、JRに乗り中央線の東小金井駅で下りましたね。そして、途中セブンイレブンで時間を潰してPM9時に帰宅しましたね。
 そして君はシャワーを浴びましたね。オレンジ色の光のシルエットに映る君の姿が僕の為に綺麗に磨いているんだ・・・と思うと、もうこの欲望を抑えられるスイッチがレベルMAXに近付いてきているのだな・・・という事を感じています。もうすぐ僕のモノになるんだと。
 この間ゴミの日に捨てた君の水色のハブラシ大切に使ってますよ。これで君と僕は水色のハブラシを通じて接吻したんですね。あ〜君の口の中の世界が僕の口の中に広がってゆく。僕と君はつながったんだよ。けどダメだよ。ゴミは当日の朝にちゃんと捨てなきゃ。僕はそういう事はとっても厳しいから、次からちゃんとするんだよ。
 ところで君は、2月23日にホームページを開設しましたね。これからは毎日君に素敵なメールを送る事にするよ。きっと君はこの僕を好きになるはずさ。
 逃げたってムダだよ。恐がったってダメだよ。だって僕は誰よりも君の事を見ているのだから・・・。

 敬具

       あなたのSより

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新天地へ

 僕は東へと車を走らす。新たな新天地へと向かって。
 これからの僕はどうなるんだろうか?そんな不安と体の中から湧き上がる小さな期待が、メトロノームの振り子の様に頭の中でポジティブとネガティブの間を、行ったり来たりしている。けどその振り子はややもすると、ネガティブの方に強く振れがちな傾いたメトロノームだ。
 僕はこんな一方的な転勤の話など、心から同意している訳ではない。しかし、これからの不透明な将来への不安、そして家族等の事を考えると、即答で反発してNo!とも言えない。たとえそれが資本主義の悲しきロボットの様な存在になり下がると分かっていれも・・・。
 「ちくしょ〜!。」そんな悔しい思いが、またアクセルを踏む強度を強めている。そしてそれに呼応する様に、車のスピードメーターも右に振れ臨界点に達しようとしている。
 心の中ではナイフを持ったもう一人の僕が、下らない経営者を刺し殺している。また違うもう一人も僕が、暴力魔になって病院送りにしている。頭の中では何にでもなれても、現実の僕はアクセルの強度に八つ当たりする位しか勇気のない小心者かもしれない。
 しかし、僕はまだ突然にリストラを言い渡されるビジネスマンよりましかも知れない。だってこれからの新天地は新たなるチャンスを生み出す希望に地になるかも知れないではないか。僕の逆転の人生は、ココからオセロの黒から白に変えていけばいいんだ、まだコーナーの位置は取られてないんだから・・・そう思う事にしよう。僕のこれからは、まだ終わっちゃいないんだ。まだ終わっちゃいないんだ。

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