ショートショート2

  ショートショート?集(その2)です。

左眼の妖怪 かぐや族の憂鬱 媚薬ジュース 通り魔だったの?
選択肢 大型のテディベア 貧乳のほほえみ 真夜中のドライブ 訪問者
由布子の朝 刺客たち・・・ 君がいた街 真知の運命 記憶の無い人
五時計        


五時計

  気が付くと大倉太一は不思議な場所に立っていた。太一の隣には見知らぬ男が立っている。ふっと遠くを見ると、般若の面を付けた不思議な人物が岩の上に立っている。そして、その般若の男がこう言った。
『大倉君、村岡君よくここまでやって来た。ここで、私から君達に一つの試練を与える。そこにある一艘の船を使って二人で私の立つこの岩場までやって来てほしい』
  すると何故か二人は声を交わすでもなく、言われるがままにその船に乗り込みその般若の人物の方へと船を走らせていた。しかし、その般若の男の立つ岩場の付近は不思議な水の流れをしていて、何度もバランスを失い二人は協力して立て直そうとするのだが、遂に船から投げ出されて水の中へと飲み込まれていった。体は水流に揉まれて回転しながら、太一はだんだん意識が遠のいていきそうになったが、その時なにかが閃いた様に前に回転するのなら、体をのけぞらせて逆回転の体制を取れば、ひょっとしてこの流れから逃れられるのではないだろうか?といちかばちかでそうしてみると、急激な水流から抜け出て水面へと辿り付いた。そしてそのまま般若の立つ岩場まで辿り付く事が出来た。
  太一はそこで一息付くと、村岡の事を思い出した。そういえば、彼もこの場所でおぼれたんだ・・・と思って、見渡してみたが、村岡の姿はどこにもない。一瞬呆然とその水の流れを眺めていると、般若の男が言った。
『心配する事はない。彼はこのテストには合格しなかったので、帰ってもらった。それだけだ。』
・・・と。
  そして、その般若の男は太一にこう質問をぶつけてきた。
『何故おまえは、村岡の様におぼれなかったのだ?』
そう聞かれると、太一は少し考えてこう答えた。
『何故か水の流れが背中を通って押している感覚があったので、逆に背中に水を通さない動きをすればなんとかなるのではないかと思って行動したら、抜け出る事が出来ました。』
その答えを聞くと、般若の男は優しくこう切り出した。
『完璧とは言えないが、まあいいだろう。君はこの課題は合格だ』
『じゃあ僕はどうなるのですか?』
『君は一つの課題を通過したので、私から一つこの天狗の五時計を授ける事にする』
と言って、太一の右腕に不思議な文字盤の腕時計をはめた。
『これは何を意味しているのですか?』
と、太一が聞くと、般若の男(天狗)はこう答えた。
『この時計は世の中を5分割して考える時計だ。基本的に世の中というのは6分割で動いている。それが5分割で動けるという事はどうなるか分かるか?』
『いいえ、分かりません』
『天狗が何故超人な扱いをされるかと言うと、世の中を5分割で動く事が出来るからだ。単純に言うと、1時間が60分としたら、5だから10分は天狗の時間という事で止める事も支配する事も出来るという事だ。そして、そのカードを数日使わずにいると、1日でも1年でも時間を止める事が出来る・・・それが天狗の5時計の極意だ』
そう言って、その男は般若の面を取った。その素顔は、以外と優しくもあり厳しくもある表情をしていた。
  太一はその素顔を見てなんとなく落ち着いた気分になり、少し冗談交じりにこう言ってみた。
『天狗だから般若の面だったのですか?』
そう言うと、天狗の方も少し笑ってこう答えた。
『おいおい。天狗がおかめの面ではおかしいだろう』
そして、お互いがやわらかい表情になった時、太一は不意に村岡の事も思いだして、天狗に聞いてみた。
『今回僕が天狗の五時計を頂いたのですが、村岡さんにもまたそのチャンスがあるのでしょうか?』
そう聞くと、天狗は慈愛のある様な表情をしてこう答えた。
『彼にはもう天狗になる資格はないので、そのチャンスは二度と訪れない。しかし彼が望むなら、仙人になる事は出来るだろう。仙人と天狗の違いは、仙人は自分を高める為に求道者として生きる事は出来ても、天狗の様に場合によっては時間を動かし、指導していくという立場にはない。彼は仙人になるか人間に戻るかの選択肢を選ぶ事になるだろう』
『では、僕はどうなるのですか?』
『天狗は次の天狗を育てたらその役目を終えて、違う次元へ進化する事になる。そして天狗になった者は長い時間をかけて時間やその他の意味を知り、その意味を知った時点でその天狗は次の天狗にその役目を継がす為に育て、その立場から退かなくてはならない。君はその次の天狗の道を歩き出した・・・というだけの事だ。今は何も分からなくてもいい。ただ、君の腕に五時計がある事だけ意識して生活しなさい。すると、次に君がしなくてはならない課題が見つかってくる』
そういうと、天狗はその場から立ち去った。
  天狗が立ち去ると、太一は布団の中にいた。どうやらこの不思議な出来事は、昨夜の夢の中の出来事であった様である。しかし、太一の右腕には、何もないけど確かに五時計をはめられた感触だけは何故か残っている。だから太一は布団から立ち上がって深呼吸をすると、自分の中だけに小さく誓った。今日から五時計を持っている事を意識して生活してみよう・・・と。

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記憶の無い人

 『一体君は誰なんだろう?』
すごく親しげに話すこの女性、裕太には全く記憶がない。けどこの女性の反応を見ると、一線を越えたとしか思えない様な、裕太の体を知っている様な気配で話かけてくる。
 そうだ、裕太の中には屈折した過去の経験から作られたもう一人の人間陽平という存在がいる事を思い出した。けど、裕太には陽平の記憶は陽平がいるというだけで、それ以外の記憶は全く持ち合わせていない。一つ言える事は、裕太のタンスの一つのスペースに裕太だったら全く着ないタイプの服が取り揃えられているトコを見ると、どうもいつの間にか陽平が独自な世界を築いている事は確かだ・・・という点を認めるしかないという事だけだった。
 ちなみに裕太自身は、一線を越えるほどの親しい女性というのは、裕太が生真面目過ぎる性格の為、二度しかないし、それ以外というか、ココ3年位は彼女すら存在しないと思っている。しかし、夜になると活動する陽平はどうも相当な遊び人である様な感じである。
『よく別の人と間違われるみたいですけど、僕は村山裕太と言いますが同じ人ですか?』
『ごめんなさい、知ってる人に良く似ていたものだから・・・けど、服装とかも雰囲気も違うのでやっぱり別人よね。陽平さんって方と間違えてたみたい。ひょっとして彼って昼間はお堅い仕事でもしてるのかなって思って声かけちゃった。彼ってすごくいい思い出だけど、謎で不思議な人だったから・・・』
 そう言ってその女性は軽く会釈をして立ち去って行った。やはり陽平の仕業である事は分かったのだが、裕太にはその記憶が全くないのだけは確かだった。

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真知の運命

 『なんで私なの・・・』
真知は自分の運命を少し呪っていた。真知は明日のアーティストを目指す美大生である。そして、今度のヌードデッサンのモデルとして裸体をさらさねばならない運命に直面していた。まだ、どんな男性にも(子供の頃の父親は除く)見せた事のない裸体をどうして大衆の前でさらさなければならないの?私はヌードを描く事を希望したはずなのに、どうしてその話が歪んで私がヌードモデル希望に変わってるの?私が気が弱いと思われているから、男性共の陰謀でそういう事になったの?そんな思いが脳の中で渦の様に乱れ動いていた。
 しかし着替える時などは、少しその事を意識している指先が誰も見ている訳がない場所でも、少しでも真知の印象を良くしようと、ファスナーを下ろす仕草がセクシーに見える様にスピードを調節しながら動かしているのは、紛れも無い事実だった。
 そして運命の日。大衆の面前の前で台に立った真知は大きく息を吸って大声でこう叫んだ。
『ここにいる男共!うら若き乙女のヌードを見る前におまえら全員真っ裸になってあたしのヌードモデルになりやがれ!!そうしたら、少しは考えれやらあ!』
そう叫んでそこに居る男性共を睨みつけた。

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君がいた街

 そ〜いえば、過去この街に俺の好きだったあいつが住んでいたよな〜。今もいるのかどうかは不明だけど。もし、ばったりとこの街で君に偶然会ったら、俺はどんなリアクションをするだろうか。あいつはどんなリアクションをするだろうか?まあ、どうなっていても今は過去形だけど。けど、あんまりいい別れ方はしなかったな〜俺もあの頃は若かっただからあんな感じの最後しか出来なかったんどろうけど。女は結構強いから、もう全く気にしてないのかもしれないけど、俺はやっぱり気になっているのかな〜この街に来ただけで、あの頃の思い出がなんとなく出て来るくらいだから・・・

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刺客たち・・・

 お盆になると地獄の釜の口が空くから海で泳いではいけない・・・でないと、死者達に足を引っ張られて地獄へ連れて行かれるぞ!・・・なんて、死んだばーちゃんがそんな事言ってたっけ。そんな事をふっと思いながら英一はお盆休みに帰省した実家の付近の海水浴場で泳いでいた。
 まあ、そんな事は迷信だわな〜なんて波頭に浮かんだり沈んだりしていると、突然足に激痛が・・・痛い!!!と、思っていると見る見るうちに足が数箇所腫れ上がってきた・・・
 確かに英一は、死者に足を引っ張られる事は無かったようだが、海の中の刺客には攻撃されたようだ。死者に恨みを買う事はないにしても、生きている女性は、過去何度か冷たくして捨てた記憶がある・・・という事は、この女たちの生霊が生み出した刺客なのだろうか?英一は腫れた足を見ながらなんとなくふっとそう感じてしまった。

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由布子の朝

 もう社内からはお局様と囁かれる年齢になった由布子、最近の由布子には一つのささやかな楽しみがあった。それまでは、態度Lな由布子だったが、ある瞬間から天使の様な由布子に変わった。それは、最近転勤してきた裕太の存在だ。裕太は由布子よりも7歳若く、体育会系のさわやか系で最初の歓迎会での話ではまだ彼女もいない・・・という事だった。
 それまでの由布子は、
「お茶汲みなんて雇用均等法に反する女性蔑視よ!」
なんて叫んでいたのだが、裕太が来てからは、自ら望んで朝のお茶汲みをする様になった。しかも、給湯室を閉め切って・・・その給湯室の秘密は後で記述するとして、皆の好みの飲み物を取り揃えた由布子は、役職の順列に従って、完璧に飲み物を配って、立場的に現在一番順列が低い裕太には最後に飲み物を置く事になる。内心は裕太に最初に置きたいのだが、そんなわざとらしい事をしては、礼儀正しい裕太の気を引く事は出来そうもないので、立場をわきまえた女を演じている訳である。
部長から、
「由布子さん変わったね〜」
なんてからかわれて、内心むかついても
「男は男らしく、女は女らしくかな〜最近私もそんな事がわかる年齢になったし」
・・・と、しおらしい女を演じ、最後にコーヒーを置く裕太には、
「いつも最後になって少し冷めててゴメンネ」
・・・と、気を遣って裕太の席にコーヒーを置く。
「そんな事ないっすよ。そうやって由布子さんが気遣ってくれるだけで僕はいいっす」
・・・と、由布子のそんな偽りの優しさに何か安心感を覚える裕太がそこにあった。
 しかし、裕太は知らない。給湯室を閉め切って由布子が行っている儀式を・・・由布子の儀式とは、飲み物を入れる際に、裕太に入れるコーヒーカップをまず取り出し、胸の谷間にそのカップを入れ、少しでも由布子のぬくもり?をカップに与える。そして、最後に裕太のコーヒーを入れる為に、胸の谷間からカップを取り出し、唾液をたくさん含ませて、裕太のカップを一周舐め回しからコーヒーを入れているのだ。由布子はカップを舐めながら、「裕太・・・好き!好き!アイシテル!」と呪文の様に小さい声でそうささやいている。
 結局裕太は由布子のぬくもりと、生霊のとりついた様な由布子の呪文と唾液のミックスしたコーヒーを毎日飲んでいる事になる。

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訪問者

 損得勘定で、いつでも天使の顔にも悪魔の顔にもなれる俺、いつから俺はそんな人間に変化してしまったのだろうか?信じていた友人に裏切られ、借金だけが俺も手元に残ったあの日からか?それとも・・・
 ほら、今日もいつも立ち寄る酒場にカモになりそうなおやじがやってきた。とりあえず利用出来る奴がどうか友達になってみるか。
「一人で飲んでいるんですか?」
俺はそう初老の男に微笑みかけた。初老の男は孤独を埋め合わせる様な笑顔に反応して、一瞬子供の様な顔をした。俺にとっては、その後その男がどうなろうと関係ない。俺にとって必要なのは、その男の孤独の隙間に入り込んで男の金を引き出す・・・それだけだ。それ以外はどうでもいい事だ。だが男はそんな裏を知る由もなく、その男の人生の一端を話始めた。
 俺は、同情するかの様な顔を浮かべながら内心舌を出して笑っていた。
「今回のゲームももらった・・・」
・・・と・・・・。

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真夜中のドライブ

 今夜も一台の車に乗せられる。その車はシートが倒され、前の視界が見えずシートを起こそうとしても、何かに押さえつけられて起こす事も、体のみを起こす事も出来ない。そして途中からブレーキも消えて、対向車のライトのみを頼りに必死でハンドルを切る。
 その前のドライブも突然ハンドルが利かなくなったり、ブレーキが踏んでもなかなか止まらない・・・という現象になったりする・・・という夢を見る。これって未来の何か不吉な暗示なのだろうか?それとも・・・ただ、いつもある結末は、どんな状態の車を運転しても、未だに事故だけは起こしていない・・・という事は、現在はトンネルの様な状態でも将来は明るい未来でもあるのだろうか?・・・という事にしておこう。暗く考えると落ち込むので。

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貧乳のほほえみ

 雨の日のPM8:30中央線の電車の中は混雑していた。そして、その電車の3両目に自分のスタイルにいかにも自信がある・・・といった女が真っ赤な体のラインを強調した服を着て乗っていた。その女は周りの男にチラチラと見られているという視線のシャワーを感じながら、周りの女達に勝ち誇ったかの様な振る舞いをしていた。
 そしてしばらくその女の近辺は、その女の挑発的な色気とその色気に反応するしもべ(男)達のエロ的視線ビーム、その女に反感を持つ以外の女達の怨念にも似たオーラに包まれた異様な空間になっていた。
 その後、何故か電車が何かのトラブルに遭ったのか一瞬急ブレーキをかけた。すると、周りの人間がそのブレーキに体のバランスが崩され、ドミノ倒しの様に倒れていった。しかし、人間とは本能で求めたい人間の所へ行こうとするのか、男達のドミノの先は全てその赤い女の方に向かっていた。
 そして、不可抗力に乗じて倒れかかった男達から逃れて立ち上がった赤い女は、雨で汚れた電車の床の泥で自慢の服が半分泥だらけになって、その女は暗い顔になっていった。すると、周りにいた男のドミノから敬遠されたさえない女、貧乳の女達が勝利宣言にも似たような微笑みをうかべ赤い女に向かって一斉に見下した様な視線を投げかけた。

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大型のテディベア

 実はこの間君の誕生日にプレゼントした大型のテディベアの中には、小型の特殊マイクが仕掛けてあるんだ。これから僕は、無線のコードを伸ばし、ミリ波のバンドにボリュームを設定して、君の素顔の声を聞く事にするよ。
 何故そんな事をするかって?それはね・・・君はいつだって僕の前では演技しかしていないだろう?だから僕は演技じゃない本音の君の声を聞く事にしたんだ。君が悪いんだよ。いつもどこかで嘘をついてる君が悪いんだよ。
 君がテディベアが好きだって事は既にリサーチの結果分かっているんだ。だから君はこの大型のテディベアを君の大事なスペースに置くはずさ。きっと置くはずさ。
 そして僕は君の本音を密かに聞く事にするよ。ヒヒヒ・・・楽しみだよ。それから決める事にするよ。君が僕にとってこれから先も大切な存在に値する人間かという事を・・・

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選択肢

 「キサマ、このワシを愚弄しているのか!」
「いえいえ、私は単なるアドバイザーであって、これはあなたが積み重ねた結果によるこれからの選択肢ですので、私にはあなたを愚弄するもしないも何もないのですよ。」
「この私を誰だと分かって言っているのか?この私は民自党の崎山と知って言っているのだろうな!」
「私を怒鳴るのも脅すのも結構ですが、私にはあなたの生前の経歴などはどうでも良い事です。私がするべき事は、あなたが崎山さんとして生きてきた魂のランクを判定して、それに従って次のDNAの乗り物の選択肢を案内するアドバイザーですので・・・私にとっての判定基準は、生命の発展の法則に従っているだけですので、生きている時に世間的に評価されているとかしてないとか、そんな事は関係ありません。かえってそんな人の方が権力を嵩に着て生命の尊厳を傷付ける事の方が多いですから、ランクが低くなる事が多い様に思いますね。」
「だからと言ってこんなこんな・・・!!!!」
「まあまあ怒らないで下さい。では、納得いく様にフリップを見て説明しましょう。」
そう言って、そのアドバイザーを名乗る存在は一つの映像を示した。
「まず、あなたの選択権の一つのクマネズミですが、この映像からも見ての通り、どんなに食べてもすぐにおなかが空く生物上の形態を持っていますので、いつでも何でもガツガツと口にしなければなりません。そして、命の危機感を持っているせいか、食事中だろうが何であろうがやたらめったら交尾して子孫への執着心を持たなくてはいけません。あなたも生きている間、必要な事を二の次にして女に執着して、政敵などを人から外れる行為で蹴落とし、理性というより本能に従って生きてきていたでしょう?これを見てもあなたの生き様を類似しているじゃないですか?次の選択肢のコモドドラゴンですが、これも生きる為には何でも時には同じ種族でさえ食べようとします。そして次のM56星雲のベムラーですが、これは知能的には高いのですが、アロス星人の奴隷です。アロス星人の為に労働を提供し、有り余るアロス星人の性欲のはけ口とならなければなりません。それは、あなたが生きてきた償いとして、次はあなたを提供するという事を経験する為です。地球では動物か爬虫類ですが、地球を離れれば、それなりの知的生命として生きる選択権もあります。ちなみに余談ですが、何故見せかけの平和が続くとクマネズミの様な存在が多くなるのかと言うと、あなたの様な生命の入れ物を用意しなくてはならなくなるので、都会で大発生するのですよ。」
すると、崎山だった生命体は青い顔をして震えながら言った。
「分かった。わしの財産の一部をおまえにやろう。だからわしだけは特別な運命を用意してくれ。なっなっ・・・」
「生命体には特別もなにもありません。たしかに今までは崎山さんとして特別な存在だったかもしれませんが、この線を越えたらあなたは次の生命体となるそれだけの存在です。私はこの後もたくさんの魂のアドバイザーをしなくてはなりませんので、この線を越えて次の生き方を選択して下さい。」

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 あなたの目の前に色の無い星があります。その星にあなたはどんな色を付けますか?赤ですか?青ですか?それとも・・・けど、その付けた色によって登れる将来の階段が決められているという事はあなたには明かされていません。それは上に続く階段もあれば、破滅に続く階段もあります。見た目は綺麗に見えても結局落ちていくしかない階段もあります。
 もう一度聞きます。あなたはこの星にどんな色をつけますか?

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通り魔だったの?

 最終の列車を降りて、帰路に向かう。道はだんだん街中のネオンのある世界から外れ暗闇の道に変わってゆく。暗闇に慣れない肉体は暗闇を拒否するかの様に、だんだんとその歩くスピードを早めてゆく。コツコツコツコツ男の早まる革靴の足音のみが暗闇のアスファルトに広がっていたが、次第に前方を歩く女のハイヒールの音が同化してくる様になる。そしてお互いの音がオーバーラップを始めた頃、女は一瞬息を吸い込む様に男の方を振り向き、より暗く細い路地へと曲がって行く。男も帰路が同じだったので、女の曲がった細い路地を付けてゆくかの如く曲がって行く。そして男が路地を曲がると、より暗い道を拒否する肉体は先程よりもスピードを早めて進んでゆく。すると女がビクッとした反応でもう一度振り返ると少し予備動作をして、意を決した様に
『キャ〜!!!』
・・・と叫んで走り去って行った。
 ひょっとして俺って通り魔か痴漢と間違えられたのだろうか?
※コレは昔実際にあった実話です。(^^;)

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媚薬ジュース

 太陽は気になっている。華子そのものが。華子は料理だけは上手いがそれ以外に容姿的に優れている訳でもなく、行動もトロく、太陽にとっては空いている時間に頼めばいつでも”させてくれる女”ただそれだけの女であるはずだった。太陽自体、他にも多数の女性とつきあっていて、別に華子はいつでも捨ててもいい女のはずだったのに、ある日華子から特性の媚薬ジュースを飲ませれてから、不思議に華子に惹かれてゆく太陽がそこにいた。そしてその日から華子の媚薬ジュースを、そして華子そのものを太陽の体が欲しがっているのが太陽には分かった。太陽は内心、なんで女に不自由しないこの俺がよりにもよってこんな女を・・・と思っていたが、意志と反して華子を求める肉体に太陽は抗う事が次第に出来なくなってきていた。
 太陽はそのジュースの内容を華子に聞いてみたのだが、7つのフルーツと数種類のアロマオイル、そして華子にしか作れない特性の媚薬を1滴入れるのだそうだか、その媚薬の内容だけは太陽に明かさなかった。そしてその媚薬ジュースはどんなに太陽が頼んでも約1ヶ月に一度しか作ってくれなかった。それが太陽にとってはもう一つの謎であった。
 そして、太陽は媚薬ジュースを飲み始めてから1年位たってから次第に他の女に魅力を感じなくなり、そしてその2年後には華子だけしか太陽の心には棲息しなくなり・・・そして結婚、そしてしばらくしてから華子は妊娠した。それと同時に華子は太陽にしばらく媚薬ジュースは作れないと告げた。
 太陽はどうしても納得がいかず、どうしてかと華子に強くその回答を迫ると、華子は不気味ににやっと笑い口を開いた。
「鮭が生まれた河川を求めてその川を遡上する様に人間も生まれた子宮を求めて還ってくるの。現にあなたは私という河川を遡上しようと何度も私の中に入ってきたわ。媚薬ジュースの最後の一滴はね、河川の一番奥にあるあなたの本能が欲しがっていた私の卵だったの。だから、あなたは本能で私しか見えなくなったの。けど、あなたと私の結晶が出来たので、あなたには私の卵をあげられなくなったの」
 そう華子は太陽に告げると、勝ち誇った様な顔をして、太陽を睨みつけた。

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かぐや族の憂鬱

 地球の生命の営みが月の引力とかの影響を受けているのと同じ様に、月の民族も地球に依存している民族が存在した。その民族は”かぐや族”という。かぐや族は、地球に存在する竹に卵を産み落とし、竹を割って育ててくれる中間里親にその子供を育ててもらわなければならないという宿命を持つ。そして、かぐや族は女しか出来ない生命のため、新たな生命を生み出す為に地球を男性を誘拐しなければならない。しかも、中間里親を必要とする為、美貌を持つ子孫にしなければならない為、それなりに美形の男性を誘拐しなければならなかった。
 ・・・と、今まではそれで上手くやってこれたのだが、最近かぐや族にとって種族繁栄の危機を迎える出来事が起こった。それは、人間の里山の放棄と、グルメの横行によるまだ地上に芽も出ていない竹の収穫。それによって、行き届いた竹林に産卵しても、新たな生命が生まれる前に人間に食べられてしまい、かと言って行き届いていない竹林に産卵しても、誰も里親に見つけてもらえる事もなく、竹の中で新たなかぐや族の生命が腐ってしまう・・・そんなジレンマに陥っているのだった。
 そこでかぐや族は新たな里親に視線を向ける為にいろいろな計画を練った。その一つは、竹薮のお金計画。その内容は、竹薮に金をばらまき、人間の視線を竹藪に向ける・・・という計画だった。しかし、それは人間の欲のみを増殖させるだけで、新たな姫を見つけてくれる手立てにはならなかった。その次に考えたのが”きぬがさたけ”計画。幻のきのこを姫が生まれる前後にセッティングして生やし、グルメブームに便乗して姫を見つけてもらうという計画だ。しかし、この計画が発動してからバブルがはじけてしまい、今に至ってもその計画はあまり効果を表していない。
 ・・・そうなると、生まれ出なかった新たな姫の怨念のみが竹薮に残る結果となってしまった。そして、姫の怨念は人間の足元に取り付く結果になってしまう・・・。
 最近あなたは、竹薮に行った時、竹の中程から少し割れて黒い液体が流れ出ているという現象を見た事がありませんか?それは、竹の中で腐乱した姫の残骸が竹を割って流れ出た現象なのです。そして、それを見た者は足をくじいたり捻挫したり、骨折したりするという・・・そんな経験が竹林に関連してありませんか?だとすると、あなたはかぐや族を怨念を足に背負っているのかもしれない・・・

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左眼の妖怪

 また、左眼に棲む妖怪が人間の生態エネルギーを欲しがっている・・・大輔の脳にその感覚が伝わった。左眼の妖怪を大輔は一つの契約によって成り立っている。それは昔、大輔が事故に遭った時、その場所の地縛霊としていた妖怪が、大輔が事故ではねられその場所に叩きつけられた為妖怪がその拍子に大輔の体内にとりついた・・・というものだった。本当の運命の予定では、大輔は左眼を失う事になっていたのだが、大輔の運命を哀れんだ妖怪が大輔の左眼の代わりになったというものだった。
 しかし、長い年月恨みと憎しみでしか生きてこなかった妖怪と大輔では、共有するには波長が違いすぎる為、時々妖怪には人間の生態エネルギーを奪う必要があったのだ。しかし、大輔としてもそれを拒めば即左眼が失明してしまう為、ある程度はしかたないだろう・・・という気持ちでその事を許していたのだった。
 ただ、この妖怪は元々家柄のある武士で、罠にはめられて切腹した為、その憎しみからこういう妖怪になったのだが、元々は精錬な人間だったらしく、一つのポリシーを持っていた。それは、
・決して純粋な人間からは生態エネルギーを奪わない
・もしも、陥れられて行き場を失っている人間には逆に奪ったエネルギーの一部を分け与える。
・エネルギーを奪い取った人間でも、その後公正したら、それに応じて一部は返還する・・・
というものだった。
 そして、今度の妖怪のターゲットは、正太郎であった。正太郎は、自分が能力ある人間と思い込み、それだけならいいのだが、周りの自分のモノサシに合わない人間が全て馬鹿な存在だと決め付け、自分中心で生きている様な存在だった為、妖怪にとってはうってつけの存在である事は確かであった。
 大輔は、瞳を閉じて深く深呼吸を始め、正太郎を左眼で凝視した。その様子は誰にも悟られてはいけない。それを悟られると、その周りの人間も巻き込んでエネルギーを奪ってしまうためだ。そして、大輔は深く息を吸い込むと、強く目を閉じた。これは、奪った魂の一部が大輔の目から逃げない様にする為の儀式である。
 妖怪が奪うエネルギーは、その人の運命の上の領域である。上の領域とは、その人が上昇していくであろう運命の部分であるという。ちなみに下の領域のエネルギーを奪っても、その部分はまずいし、下の領域を奪うという事は、そんな人間が成功するしかなくなる運命になるという事になるというので、そんな人間を成功させても、後々周りの人間に迷惑をかけるだけなので、そうするのだそうである。・・・と、いう事はその人間には今のままでは100パーセント成功はありえないし、今のレベルも奪う為、その人間は下の階段しか歩けなくなる・・・という事である。
 妖怪の言い分としては、それでも1パーセントの”希望”だけは奪わないでおくそうだ。それは、人間は絶望を知った時、今までの行いを反省し、人に役に立つ存在になる事もあるそうなので、そこまで奪ったら、奪われた人間は死ぬしかなくなってしまう為、そうしているそうだ。まあ、500年も地縛霊として存在し、様々な出来事を見てきた妖怪の言う事だから、そんなものなのだろうと、大輔も妙に納得していた部分はあった。
 何か話が説明に費やされたが、その後の正太郎の運命はどうなったかって?正太郎はその後もわがままな存在が変わる事なく他人に迷惑をかけ続け、妖怪の予告通り正太郎は100日後に自殺した。原因は、騙そうとしていた相手に逆に騙され、多額の借金を背負う事になり、行き場を失っての行動だったらしい。ちなみに自殺の種別は焼身自殺である。そして、本来正太郎が歩むかも知れなかった運命の一部は大輔の左眼の亜空間の中に存在する。大輔も奪うべき魂の汚れた人間がもうその場にいなくなった為、妖怪と話し合って職場を変える予定にしている。次の生態エネルギーを奪うべきターゲットを探すために・・・

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